ユウキStory

【エピソード2】そこにあったのは、あの日の彼女の笑顔

黄色い女の子、が彼女のイメージだった。

 

別に全身黄色のワンピースを着てくるわけではなかったが、化粧ポーチやスマホケースなど、小物やワンポイントに黄色を加えるのが好きだと言っていた。

聞けば両親からもらうものが黄色のものが多かったらしい。黄色の髪飾りや、黄色い手鏡、プーさんのぬいぐるみなど、今でも実家の部屋には大切に残っているのだという。

そしてそれは、明るい顔立ちの彼女にぴったりだった。

「黄色は、幸せを運んでくれる色なの」

彼女はたまにそんなことを言っていた。

そうして笑う彼女の笑顔がまた、さわやかな黄色に光ってみえた。

 

学生時代から付き合っていた彼女が社会人になると、そんな黄色の小物たちは少し浮いていた。

会社が多忙なのもあったけど、以前から愚痴っぽかった彼女は、会うたびに不満を口にした。

正直、ここまで愚痴っぽいとは思ってなかった。社会人になると、人との関係性は変わるんだな。

最初はうんうん頷いて聞いていた僕だったが、中にはあまり共感しづらい同僚への嫌みもあり、女子ってこういうものなのかなぁと思ったりした。

僕だって同じタイミングで入社して、こっちの会社で大変なことや人間関係で辛いこともある。

それでも聞くほうになると気持ちのいいものではないとガマンしていた。

彼女はそんな僕をよそに、不満や悩みを吐き出し続けた。

それは、いつまでも大人になれない子どものようにも見えた。

学生時代から使い続けている黄色い小物たちが、徐々に彼女に似合わなくなったようにも思えた。

彼女と別れた1年前の夏

入社してすぐでもそんな状況で、ようやく慣れて仕事を任されるようになった4年目で、彼女は転属を言い渡された。

内勤での企画職から、外での営業への配置転換は珍しいものではないが、慣れない環境にまた彼女は不満を口にした。

その頃から僕も職場で任される範囲が増えてきていて、あまり余裕がなかった。

自然と、彼女と会う回数が減っていったように思う。

できれば僕もひと呼吸したかった。でも、彼女はそうさせてくれなかった。

今振り返ると、もっと余裕のある男で居たかったな、とも思う。

 

そうして、どちらからともなく、僕らは別れた。

お互いにすれ違って、感じていることは一緒だったのに、「解決する」より「一緒にいない」ことを選んだ。

それほどに、疲れてしまったんだと思う。

ほんの1年前だったのに、なんだかとても子どもだったと感じる。

今だったら違っていたのか、それは誰にもわからない。

黄色い笑顔と、少しだけ映った化粧ポーチ

Pair’s」でみつけたそのコは、屈託のない笑顔でこちらを見ていた。

まるで僕だけに微笑みかけてくれるように、とかいうと童貞っぽいな。

とにかく、アイドルと目が合ったような感覚で、僕は少しの間そのコと見つめ合った。

 

その笑顔と同時に目に入ったのが、彼女が自宅で自撮りしたであろう机にあった化粧ポーチだ。

黄色い化粧ポーチだった。

前のカノジョと同じものではないようだ。

でも、それだけで、なんだかあのときの笑顔をふと思い出した。

さわやかで、屈託のない、黄色い笑顔。

なんだか、巡り合わせのようなものを感じた。

 

 

 

いやいや、本当に童貞かよ。

そもそも僕はまだ顔出しもしていない、有料会員にもなっていない傍観者だ。

なに運命とか感じてトキめいちゃってんだ。

アホか。

 

そう心で呟きつつ、画面から目を離せないでいる僕がいる。

 

いいね押すだけなら無料と知った僕は……

Pair’s」では、入会時に「いいね」が30pt付与される。

いいねを押すだけなら、無料でも、本人確認前でも、できるのだ。

気になった彼女は、すでに「250いいね」を獲得していて、どうやら人気のある人のようだ。

もちろんマッチングしない可能性もある。むしろ僕みたいな平凡な顔立ちは目にも留まらないかもしれない。

 

そう思うと、逆に気がラクになった。

どうせダメ元なら、当たって砕けろだな。

なんで現実世界で、これくらいの勇気がでないのか不思議だが、アプリだと不思議とそう思えた。

 

でもとりあえず、自分が何者か伝わらないと、さすがにマッチングも難しいだろうな。

そう思って、スマホのアルバムにある一番自然な顔の写真と、簡単な自己紹介文、あとは彼女の登録していた趣味で自分も合いそうなものに登録した。

なんだ、結局やる気じゃないか、自分。

そう自嘲しながら、ある程度の登録を終えて、いざ「いいね」を押す。

押す瞬間は、少し緊張したのを、今でも覚えている―――